不都合な真実
台風19号の影響で上陸前から大雨の被害が出ています。大きな河川は氾濫する可能性が高いので平地にお住まいの場合は高台に避難してください。安全な場所にいる方からお読みください。
引越し前後のバタバタにかまけて89日の間隔が開いてしまった。ご容赦ください。
自宅から建設地への距離が遠くなり、片道3時間から5時間半に移動所要時間が伸びてしまった。しかし月に一回程度現地に赴いて作業は続けていた。
前回は壁の枠組み、垂木の固定、壁の(おおよその)垂直取りと、合板を数枚貼るところまでをお伝えした。またこれに並行して、小屋の隅部分の土台が沈んでいたところの補強についても記述した。
さあこれにて一安心と、引越し作業を進めていたのだが、山の持ち主の友人から連絡が届いた。そのころは梅雨が長引き、じっとりと雨が続く日々だった。
写真右の、手前から奥に伸びているのは、2本の2x6を接続して2つの木に渡した梁である。中央にある白い材木は、土台の2x10にボルトとビスで固定し、先ほどの2x6の上に乗りかかるように荷重を逃すつもりで設置したものだ。さらに、その奥で土台と2x6の間を9本の木材で接続してある。
しかし、中央の白い材木が明らかに傾いているのがお分かりいただけると思う。ボルトとビスでは十分土台に固定できておらず、傾いてしまっている。作った時は傾いていなかったので、風の振動によって徐々に沈下が進行したか、合板が雨で濡れ荷重が増加して沈んだかのどちらかだと思われる。ボルトでガッチリ止めても、木材だと普通にめり込んで曲がってしまうのか。勉強になった。
まだまだ雨は続きそうだし、すでに数cm沈んでいてこのままでは崩壊待った無しなので、友人が土台の下に鉄製のジャッキを入れて支えてくれた。近距離パワー型でありながら瞬発力と明確なビジョンを併せ持つ、頼れる男だ。ありがたい。
原因を考察したい。
目的を整理すると、土台の角にかかる荷重を、50cmほど横にある梁に分散させたい。土台を横方向に延長して架橋すれば実現できそうだが、延長部分の剛性がキーとなる。
今回、2本のボルト(Z金具の、M12のもの。座金無し)と10前後のビスで固定したところ、剛性不足で沈下した。強度を考えると、ビスはさほど寄与しておらず、ボルト2本のみで考えた方が簡単だ。(実際、後日これを除去したところ、ビスは全て折れ、もしくは曲がり、ボルト本体は全く曲がっていなかった)
延長部材単体としては、ボルト固定部を中心に左回りに回転しているわけで、土台との接合を考える都合上、荷重は右端の乗っかってる部分に、上向きの荷重があると仮定する。2つのボルトの中点を回転軸とすると、力点は右端、作用点は2つのボルト。それぞれ半分ずつ力がかかったとすると、画像から目分量で距離の割合を見積もったところ、本来の荷重の約4.5倍の力が1本のボルトにかかったと計算できる。少し無理な継ぎ足し建築をすると、テコの原理で接合部に数倍の負荷がかかることがあるいうことか。知らず知らずのうちに、不都合な力学的作用がもたらされていたようだ。
すると、対策としてはボルト接合部に無理な負荷がかからないような延長の仕方をするということになる。また、ちゃんとボルトに座金を使用することも、木材へのめり込みを減少させて効果があるだろう。
ボルトを10倍に増やし、力技で強化する方法を取ることもできる。しかしこれはクレバーではないし、ちっちゃい木の板にボルトがたくさん付いているとみっともない。
そこで、テコの作用が出来るだけ少なくなるように延長する方法を検討する。2箇所のボルトが近ければ近いほど負荷が大きくなるようなので、これを出来るだけ離すことにする。
12フィートの2x8を用意して、土台に沿わせるように設置する。1箇所は土台の右端付近に、もう1箇所は材木の左端付近にボルト固定することで、力点との距離の比率は小さくなる。ボルトは左右2個ずつとし、座金もしっかり使うこととする。ざっと計算すると、ボルト1個あたりの荷重は、角にかかる荷重の77%程度となる。従来に比較して6分の1である。さらに座金もしっかり使うことにして、強化を図りたい。
しかし、これからさらに屋根合板、屋根材、窓、内壁、天井、外壁、家具の重量が加算されると思うと、不十分な気もする。小屋の完成までは下のジャッキは外さないだろうと思う。
建築は奥が深いです。しかし問題の数も有限であり、問題の数が増えないタイプの対策を続けていけばいつか解消される。人生の有限性との対立問題については、金の力と文明の叡智、そしてもっとも大切な、人の手を借りて解決していこう。