作業記録 8.3-6 その2
さて、酔いも覚めて天気も良好。屋根作業に取り掛かる。
一般的な家屋の屋根を見てみると、瓦だとか、金属板だとか、そんなもので覆ってあると思う。一番上面に露出しているのは屋根材で、紫外線や雨、雪、熱などにさらされ、最も耐久性が要求される。しかし瓦を見てもわかるように、大雨や嵐があれば、少量ずつではあるが屋根材の下に水滴が浸透していく。必ずしも屋根材だけで雨の侵入を防いでいるわけではなさそうだ。
では止水効果の役割を最も果たしているのは何か。現代の家屋では、ルーフィングと呼ばれるシートではないかと思う。アスファルトルーフィングの名前で知られているこのシートは、アスファルトが含浸されており防水性がある。これを屋根材の下地にしっかり貼っておくことで、雨漏りが防がれる。
ルーフィングを貼る屋根の下地材は、野地板と呼ばれる。もともと在来工法では、屋根の垂木の上に杉板を横方向に間隔を開けて並べて貼り、瓦を葺く下地にしたらしい。昔の日本の建築は湿気対策で通気性を優先したつくりだったため、屋根の野地板も換気を考慮して疎なつくりとしたのだろうか。もちろん重い瓦を使う代わりに、できるだけ下地を軽量な構造にし、屋根の重量を抑える狙いもあったのだろう。なんにせよ、ルーフィングもなければ瓦の製品誤差も大きく、風が吹けば雨漏りしそうだ。
そんないきさつで、ホームセンターなどでは表面が荒い、薄い杉板のことを野地板と呼んで販売している。安いのでDIYでもたまに使われる。
しかし、現代の屋根、特にツーバイフォー工法では、野地板は構造用合板をぴったり密に貼ってしまっていることが多い。重量はやや上がるが、ルーフィングを敷くときにより気密性を高めて敷き詰めることができるし、隙間が無くてなんか見た目もきれいである。こちらの方が雨漏りしにくいであろう。なお合板を使用する場合でも野地板と呼んでいる。我々もこれを採用しよう。
まとめると、垂木の上にまず野地板として構造用合板、その上にアスファルトルーフィング、その上に屋根材となる。
屋根を設計する際、検討すべきは、屋根材に何を使うか、どんな形にするのか、軒をどれくらい出すのか、勾配はどれくらいにするのか。それくらい?
屋根材は様々な物があり、選びにくい。価格や、見た目、メンテナンス性や耐用年数、重量、施工性、入手の容易さ、断熱性など様々な要素がある。用途によって最適解は異なるだろう。
セルフビルダーにとって必要条件となる最初の要素は、入手できるかどうかではないだろうか。近所のホームセンターを物色したところ、目についたのは以下の通り。
・ポリカーボネート波板(ポリカ) 943yen/m2
・トタン波板 847yen/m2
・アスファルトシングル 1762yen/m2
・オンデュリン波板(クラシックシート) 1417yen/m2
・ガルバリウム鋼板 3345yen/m2
右には、コメリドットコムでの葺き面積あたりの価格を付記した。
ポリカ波板はDIYブログでもよく見る材料で、自転車置場や採光性が必要な小屋などに使われている。明るいのは素晴らしいが、いかにもプラスチックといった見た目で、週末を優雅に過ごす場所には不適切だし、安っぽく見える。
同様の理由でトタン屋根もあんまりである。立地条件が山中で、雨のときは高いところにある杉の葉から水滴が落ちてくる。通常の雨粒よりも大きく、金属屋根は雨音がかなりノイジーになることが予想される。値段は魅力的だけどね。トタンは物置とかにしたらいいと思う。
そういうところで、アスファルトシングルとオンデュリン波板が最終候補となった。どちらもアスファルト含浸繊維であり、シングルの方がかなり重い。シングルは1平米あたり7枚使用するのに比べ、オンデュリンは2×0.95mの大きさがあり、屋根材同士の接合部が少ない上に施工が容易である。シングルは2.5寸(14.5°)以上の勾配が必要だが、オンデュリンは5°から施工可能である。
以上の理由からオンデュリン波板を採用した。クラシックシートという名前で販売されていた。大きめのホームセンターなら置いてあると思う。
見た目は正直なところアスファルトシングルの方が好みだが、オンデュリンも落ち着いた雰囲気であり、許容とした。
屋根材は決定した。次は形である。
すでに片流れ屋根に決めて垂木も張ってしまったが、他の選択肢としては、切妻屋根と、寄棟屋根がある。寄棟屋根は棟が何箇所もあって、設計や施工が煩雑なため、あまり素人向きじゃないと思う。切妻屋根か片流れ屋根から選ぶのが良さそうだ。
雨樋をつけないので、切妻屋根では2面から雨粒が滴る。サイドデッキもあることを考慮すると、片流れ屋根では雨だれが1面のみとなり、直接地面に注げるためメリットがあるように思える。
片流れ屋根では屋根勾配による壁の高さの差が、切妻屋根に比べて2倍となる。
片流れ屋根では垂木を1本で施工できるため、棟を作る必要が無く楽である。
切妻屋根に比べて片流れ屋根では、1面の面積が大きくなるため、より多くの雨が流れることになり、雨漏りのリスクが高まる。
片流れ屋根は建物の形に動きをつけ、全体にモダンな印象となる。
条件を並べるとなかなか決めにくいが、雨漏りリスクや片面の壁が高くなる問題については、小さな小屋であることと、勾配をゆるくすることによって最小化されると考えた。最終的には、デザインと施工性の面から、片流れ屋根を採用した。
正面出入り口側のデッキ面を棟側とし、反対の山側を軒とすることで、雨はすべて地面に落ち、デッキにかからないようにした。小屋奥の天井高を1800mmと低めにし、屋根勾配も10°と緩くすることで、ドア面が高くなりすぎないようにした。
最後に軒の長さを決めなければならない。
軒は夏の日光を遮ったり、外壁にかかる雨を減らしたり、家屋の周りで過ごしやすくしたり、また出入りの際に雨に濡れなくしたりしてくれる、とてもいいヤツだ。だが長すぎると今度は屋根の重量が重くなったり(特に雪!)、屋根の構造体を強化しなければならなかったり、何かと問題もある。またツリーハウスの場合は、横にある樹木を避けなければならなかったりと、大きさの制約もある。
今回は、主に垂木の構造を作るのが面倒という理由で、横の軒を合板のみで伸ばすこととした。合板のみでは相当強度が低いので、軒は四方とも20cmのみと、かなり短い長さとした。そのため、デッキでは軒先で雨宿りするといったことは望めない。
しかし、小屋の用途として、生活に使うというよりは週末のんびりする場といった想定なので、雨の日にわざわざデッキで過ごすようなことはしない。これがしたいなら、むしろしっかりタープを張りますわ。
雨から外壁を保護する役割が満たせないのが気になるが、その他多くの部分も雨ざらしなのだし、軒の果たす役目がそう大きいとも思えない。スルー。
以上より、勾配10°で20cmの軒を持つ片流れ屋根を、オンデュリン波板で施工することといたします。
検討段階だけでかなり書いてしまった。今回はここまでとします。
次回、施工。