ツリーハウス施工記録

建築素人がツリーハウスをセルフビルドしています。トラブル続きの施工記録です。随時更新

不都合な真実

台風19号の影響で上陸前から大雨の被害が出ています。大きな河川は氾濫する可能性が高いので平地にお住まいの場合は高台に避難してください。安全な場所にいる方からお読みください。

 

引越し前後のバタバタにかまけて89日の間隔が開いてしまった。ご容赦ください。

自宅から建設地への距離が遠くなり、片道3時間から5時間半に移動所要時間が伸びてしまった。しかし月に一回程度現地に赴いて作業は続けていた。

 

前回は壁の枠組み、垂木の固定、壁の(おおよその)垂直取りと、合板を数枚貼るところまでをお伝えした。またこれに並行して、小屋の隅部分の土台が沈んでいたところの補強についても記述した。

 

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Fig.1 小屋の隅部分の沈み込みを補強する様子

 

さあこれにて一安心と、引越し作業を進めていたのだが、山の持ち主の友人から連絡が届いた。そのころは梅雨が長引き、じっとりと雨が続く日々だった。

 

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Fig.2 補強部分の歪みと、土台の沈み込み

 

写真右の、手前から奥に伸びているのは、2本の2x6を接続して2つの木に渡した梁である。中央にある白い材木は、土台の2x10にボルトとビスで固定し、先ほどの2x6の上に乗りかかるように荷重を逃すつもりで設置したものだ。さらに、その奥で土台と2x6の間を9本の木材で接続してある。

しかし、中央の白い材木が明らかに傾いているのがお分かりいただけると思う。ボルトとビスでは十分土台に固定できておらず、傾いてしまっている。作った時は傾いていなかったので、風の振動によって徐々に沈下が進行したか、合板が雨で濡れ荷重が増加して沈んだかのどちらかだと思われる。ボルトでガッチリ止めても、木材だと普通にめり込んで曲がってしまうのか。勉強になった。

 

まだまだ雨は続きそうだし、すでに数cm沈んでいてこのままでは崩壊待った無しなので、友人が土台の下に鉄製のジャッキを入れて支えてくれた。近距離パワー型でありながら瞬発力と明確なビジョンを併せ持つ、頼れる男だ。ありがたい。

 

原因を考察したい。

目的を整理すると、土台の角にかかる荷重を、50cmほど横にある梁に分散させたい。土台を横方向に延長して架橋すれば実現できそうだが、延長部分の剛性がキーとなる。

今回、2本のボルト(Z金具の、M12のもの。座金無し)と10前後のビスで固定したところ、剛性不足で沈下した。強度を考えると、ビスはさほど寄与しておらず、ボルト2本のみで考えた方が簡単だ。(実際、後日これを除去したところ、ビスは全て折れ、もしくは曲がり、ボルト本体は全く曲がっていなかった)

 

延長部材単体としては、ボルト固定部を中心に左回りに回転しているわけで、土台との接合を考える都合上、荷重は右端の乗っかってる部分に、上向きの荷重があると仮定する。2つのボルトの中点を回転軸とすると、力点は右端、作用点は2つのボルト。それぞれ半分ずつ力がかかったとすると、画像から目分量で距離の割合を見積もったところ、本来の荷重の約4.5倍の力が1本のボルトにかかったと計算できる。少し無理な継ぎ足し建築をすると、テコの原理で接合部に数倍の負荷がかかることがあるいうことか。知らず知らずのうちに、不都合な力学的作用がもたらされていたようだ。

 

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Fig.3 目分量による距離の比

 

すると、対策としてはボルト接合部に無理な負荷がかからないような延長の仕方をするということになる。また、ちゃんとボルトに座金を使用することも、木材へのめり込みを減少させて効果があるだろう。

 

ボルトを10倍に増やし、力技で強化する方法を取ることもできる。しかしこれはクレバーではないし、ちっちゃい木の板にボルトがたくさん付いているとみっともない。

 

そこで、テコの作用が出来るだけ少なくなるように延長する方法を検討する。2箇所のボルトが近ければ近いほど負荷が大きくなるようなので、これを出来るだけ離すことにする。

12フィートの2x8を用意して、土台に沿わせるように設置する。1箇所は土台の右端付近に、もう1箇所は材木の左端付近にボルト固定することで、力点との距離の比率は小さくなる。ボルトは左右2個ずつとし、座金もしっかり使うこととする。ざっと計算すると、ボルト1個あたりの荷重は、角にかかる荷重の77%程度となる。従来に比較して6分の1である。さらに座金もしっかり使うことにして、強化を図りたい。

 

しかし、これからさらに屋根合板、屋根材、窓、内壁、天井、外壁、家具の重量が加算されると思うと、不十分な気もする。小屋の完成までは下のジャッキは外さないだろうと思う。

 

 

 

建築は奥が深いです。しかし問題の数も有限であり、問題の数が増えないタイプの対策を続けていけばいつか解消される。人生の有限性との対立問題については、金の力と文明の叡智、そしてもっとも大切な、人の手を借りて解決していこう。

作業記録 6.22-25 その4

家屋手前の角が沈みはじめているものの、繰り返しの応急処置によりなんとか姿を保っているツリーハウス。土台が再び安定したので、枠組み制作を続けて行きます。

 

前回までで4面の壁が出来たため、今回は垂木と、壁の合板を貼っていこう。その前に、側面上方の、斜め部分の壁を作っていなかったため、丸のこの斜め切断を駆使しながら斜めの壁を作成した。ここの部分は建築用語で矢切と呼ぶらしい。

これが出来たら、垂木を乗せていく。垂木どめという便利な金具もあるようだが、節約のためにここも斜めビスで止めていった。天井にも断熱材は必要なので、垂木の間隔も壁と同様にしておく。

この工程で軒先がどれだけ飛び出すかが決まるが、軒先は長く出したほうが壁が濡れなくて劣化が遅いし、ドアから出たときに濡れにくくて良い。また、夏場の日光が窓や壁に当たらず、室温上昇が抑制される効果もある。しかし、長い軒先は屋根面の流水量を増加させ、建物の重量を増やすとともに重心を高くし、積雪時にはより多くの重量負荷をかけることになる。

現場は冬季となるとかなりの積雪量がある場所で、重量の問題も厳しいため、軒は4面ともギリギリの20cmのみとした。垂木も3500mmくらいで良いので、12フィートの内に収まる。

 

というわけで、垂木を7本用意し、壁の上に固定していく。高所作業が増えてきて、転落に一層注意する。最初は床の根太の上を歩くだけでかなりの恐怖感を持ったが、随分高さにも慣れてきた。常に注意深い行動は必要だが、過度の恐怖感は作業の効率を落とし、かえって事故を増やす。恐怖が拭えない場合は、安全対策をいくつも講じることによって理性で克服していく。何をするにも健全なスリルを心がけていきたい。

 

垂木を張り終えると、いよいよ家の形が見えてくる。ブルーシートを貼ってしまえば雨はしのげるようになった。

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箱になりました

合板の上の居心地もかなり良くなって、お宅感が出てきた。この勢いで壁の合板を貼っていこう。

本来は壁パネルを寝かせた状態で貼れるが、やんごとなき都合により枠組みを立ててから合板を貼ることにしたので、ツリーハウスの外側からビスを止めていくというトリッキーかつリスキーな方法で貼っていく。まずはデッキがあって打ちやすい前面(写真奥)からだ。

 

壁の垂直を確認するには、柱におもりを付けた紐を垂らして垂直を確認したり、柱に水準器を沿わせて調整したり、差し金で床との直角を確認したり、いろいろ方法はあるが、壁全体の直角を確認出来て、簡便で道具もいらないのは、2本の対角線の長さが等しいことを確認する方法だろう。2人いないとやりにくいが、巻き尺のみで実施できる。

たいてい直角はどちらかにずれているので、紐で引っ張って調整しながら直角を出していく。まずどちらに傾いているか確認し、直角をとりたい面に対して側面となる壁に、片方は天井側、もう片方は床側にパラコードなどの細引きを巻きつける。そして自在結びで引き締めると目的の壁が歪むので、直角が出せた状態で合板を貼り付ける。一直線上でない3点をビス止めすれば、直角は固定される。

枠組みへのビス止めは、柱や梁がある部分は全て行い、釘の場合は15cmごとに打つと決められている。今回はコーススレッドビスを使っているし、とても小型の家屋なのでもう少し間隔を空けて(疎に)ビス止めした。窓の部分は後から切り抜くこととして、まずは無視して合板を貼っていく。455mmピッチではないので継ぎ目は柱上でないが、ここはあまりこだわらずに貼っていった。

 

デッキがある前面は良いが、側面などはデッキが出来てなく、空中でビス止めしなければならない。なんとか身を乗り出して止めるが、やりにくい。2mほどの高さなので、周りから脚立でやった方がやりやすい。屋根合板作業までに、安全帯の知識をつけておかなければならない。

 

合板張りと並行して、前日行った土台の補強を強化した。

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奥の樹木まで2×6を延長し、土台との接合部も追加した

2枚を繋げた2×6が手前と奥の木に乗り、問題の角に付けられた2×10がそこに乗っかるような形とした。これで、短い2×10と土台を固定するボルトが緩まない限り、この角が沈むことは無いだろう。もちろん2×6のたわみは発生するだろうが。

この部分にもデッキを付け、奥の木の右から回り込むような形で、ツリーハウスへのアプローチとしたい。山手側から入れば高低差も少なく、階段の心理的負担が解消する。デッキの高さを奥と合わせるため、さらに2×8を重ね、たわみの対策ともしたい。やれやれ、また追加予算だ。

 

合板を8枚ほど貼ったところで、時間切れとなってしまった(今日入る温泉の営業時間的に)。今回は4日間の作業日を得て、家の形が見えてきた。問題は発生しているが、確実に先に進んでいる。満足する進捗だった。夜の日本酒も美味しかった。

 

ここで、普段の家の引っ越しが入ってしまった。しばらく片付けに追われ、作業が進まない。そんな中、強化されたと思われた土台に関する、好ましくない報告が入るのであった。

次回へ続く。

作業記録 6.22-25 その3

さて、前回壁を3面組み付けたところまで報告した。

後半2日間はいつもとは別の友人に泊まり込みで手伝ってもらえたため、意気揚々と午前7時にワークマンに集合した。ワークマン大好き。

 

今回は残る壁1面を組み付けて、屋根の垂木もつけてしまおう。そして、壁の合板と屋根の合板もできれば貼ってしまいたい。

垂木とは、屋根の高い方から低い方へ渡す、斜めの梁のことである。このハウスでは片流れ屋根を採用しており、垂木は一定角度で一面作ればいいだけなので楽チンである。出入り口に雨だれが落ちにくく、施工も簡単そうなので片流れ屋根としてみたが、切妻屋根などに比べて雨漏りトラブルは起こりやすいらしい。

第一に、屋根の下の方で流れる水量が、両側に流れ落ちる場合に比べて2倍となるため、純粋に水量が増えることによる漏水リスクがある。

また、屋根の高い側の軒先は、雨だれが屋根の裏側を伝って、壁との取り合い部に流れ込む。ちょうど急須から注いだお茶が、急須の口から手前に伝わって机にこぼれるようなことが起こる。何故か急須でよく起こるのだが、なんであんな形してるんだ?21世紀にもなって未だに口から手前に伝わってこぼれやすい形の急須が市場に出回っているのは、とても理解に苦しむ。その方が美味しいのか?

話は戻り、急須の口と同じように、水が伝わりにくくするためには、出口の水切れを良くすれば良い。ちょうど注ぎ口に差し込んでお茶が伝わってくるのを防止する金属をAmazonで買ったことがあるが、屋根の軒先でも同様に、金属板を取り付けて水切れを良くする。水切り板としてホームセンターでも取扱いがある。

 

 こちらは急須の方の金属

 

壁の最後の一面は、プラットフォーム上で直接固定しながら組み立てた。二人いると速い。ドアは1900×700mmとしてみた。ドアの大きさにあまり定石はなさそう。できるだけ軽く、通りやすく、デザインを実現できる大きさを考えるしかない。長方形でないと戸締まりがかなり厄介なことになりそうだったので、最後まで残して慎重に計測しながら組み立てた。

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奥側が最後の1面

 

しかしここまでで柱の重量が土台にかかり、写真右手前の隅がかなり沈んできた。だいたい5cm程歪んで来ており、放置すれば土台が崩壊しかねない状態であった。その場は鋼製束と丸太を組み合わせて最低限のジャッキアップをして一日作業していたが、その鋼製束もグニャリと曲がってしまい、根本的解決が必要となった。

 

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バッチリかと思われたが、一時しのぎにもならず。

 

原因は、この角が最も荷重が大きく、固定のボルトから遠いからだ。こちらが沈んだからといって対角の方が持ち上がっているわけではなく、こちらだけが沈んでいる。土台の四角形の剛性力は保たれておらず、接合部が歪んでこのように角がたわんでいる。

もともとこのために、樹木の根元側から斜めの材(方杖)を追加してある。

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今回問題となっているのは手前の角

しかしこれだけでは重みに耐えられず、一緒に歪んでいると考えられる。簡単に言えば、方杖が効いていない。

土台の2×10材は曲がっていないようなので、木材の強度不足ではなさそうだ。

 

ツリーハウスの写真を見ていて思ったのだが、この斜めの材はほとんどが45°か、それよりも急な角度に作ってあり、今回の設計ほど寝かせた角度で施工しているものは見当たらなかった。設計図で測ったら27°であった。

方杖のベストな角度を調べると、具体的な根拠は見当たらなかったが、どうやら45°が最も突っ張り強度が出て良いらしい。30°以下では互いにたわんでしまいあまり上向きのベクトルが得られないのだろうか。とりあえず、これは45°に作り直す必要がある。

樹木のできる限り低い位置にボルトを追加し、45°の角度で方杖を伸ばそう。できれば土台の2×10と同一平面上に方杖も付けたい。そのためには現在の固定方法を変更する必要もある。固定金具も含めて、次回以降の作業に持ち越しとする。

 

方杖は後日修正として、この場を乗り切らなくてはならない。

問題の角の近くに、多少曲がっていて細めだが、ボルトを打てなくはない樹木がある。当初は使用しない予定だったが、この際樹木を追加することとした。

予定外のため12mmの寸切を用意してきて、新たな樹木に貫通させた。ここに手持ちの2×6材を乗せ、隣の土台と連結させる。ここをガチガチにしておけば、重みは新たなボルトに分散するであろう。

 

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右手前が新たなボルト部分。12フィートの2×6を乗せている。

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手持ちの端材で複数橋渡しする。乗ってくれ

この状態でジャッキを外したところ、5mm程度の沈み込みで耐えてくれた。接合はまだ弱いと思われるので、翌日6本追加した。

方杖は効いてないと判明したので、外してしまった。

 

上の3D図面の右の樹木には、前回ボルトを貫通させたため、反対側にもネジが出ている。

さらに補強部分の強度を出すため、12Fの2×6を反対側のボルトにも乗せて、上の写真の材と接合すれば、まず落ちなくなるだろう。ゆくゆくは、ここにもデッキを敷きたい。

 

 

土台が安定せず、なかなか家屋の作業が進まない。やはり無理やりでも長い材を作って、2本の樹木の間にビームを渡す構造の方が良かったか。しかし今となっては後戻り出来ない。当初の予定からどんどん離れつつ、人生は進んでいく。

 

今回作業はもう一話分続きます。お待ちを。

作業記録 6.22-25 その2

季節は梅雨に入り、今回の作業日も4日中2.5日は雨の予報であった。午前中晴れていれば雨が降る前に出来るだけ進めたいため、昼ごはんも遅らせて、頑張って作業をしていた。

しかし予想に反して4日間とも雨が降ることはなく、前半に飛ばしすぎたペース配分のため毎日疲労を蓄積させることとなり、体力的に消耗の激しい4日間であった。
 
さて、前回はボルトを貫通させることに1日を費やした。お陰で破滅的展開は回避することができた。
ツリーハウスの方は現在床の合板を貼ったところまでだったので、次は壁のパネルを作る段階だ。
 
通常のツーバイフォー工法では、2×4材で壁の枠組みを組み立て、枠のの直角を正確に調整したところに構造用合板を貼り付ける。全ての壁を組み立てたあと、床の上に運び上げ、床の根太にネジ止めし、壁同士も接合することで壁が成立する。
合板はホームセンターで最も手に入りやすい針葉樹合板の910×1820×12mmのものを用いれば良いようだ。おおむね1枚あたり1200円前後で買えれば良いだろうか。
合板を貼り付けると、この板が面として斜め方向の力に抗ってくれる。そのため筋交い(骨組みの写真でよく見る斜めの柱)は基本的に必要ない。枠組みが縦横の格子だけになるので、断熱材が入れやすくて嬉しい。
 
ここでも柱と柱の間隔を検討する必要がある。合板の寸法的には、455mmピッチ(柱と柱の間隔でいうと417mm)で作るのが最も無駄がなく、作業性も高い。しかし今回使用する(値段に釣られて買った)グラスウール断熱材の幅が430mmであるため、通常よりやや広い430mm間隔で作った。
また、合板を貼ってしまうと壁はかなり重くなる。枠組みだけなら一人で動かせるが、合板を貼った後では二人でも山の上に運び上げるのが一苦労になる。そのため、合板は土台に組み付けた後に貼ることとして、まずは枠組みの作成を優先した。
 
典型的なツーバイフォーであれば、床合板を貼り終えた段階で、水平がきちんと取れた平面(プラットフォームという)ができる。この上に2×4材を置いて、悠々と組んで行けば良いわけだ。
しかし今回は土台の不安定性もあり、あまり水平が正確でない。さらに、2×4材をこつこつ山に運び上げるのも一苦労である。そのため、作業場で壁の枠組みを組み立て、それを一気に山に運び上げて、プラットフォームに固定する段取りで作業した。
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この壁を設計するときに一つ問題となるのが、角の部分をどう処理するかだ。縦の材が単独の2×4のみだと、角を担当する壁の断熱材の耳を固定する面が確保できないし、内装側のボードの隅を打ち付ける柱も確保できない。
また、壁同士の接合を担うため四隅の強度は高い必要があるらしく、ツーバイフォーを何本か重ねて構成する方法を取ることが多い。
具体的には、壁の端っこの柱は2×4を3本重ねて作成すると、内壁や断熱材を固定する部分を確保できる。そこに接合する側の壁は、通常通り端っこも2×4を1本だけで作成し、壁同士を組み立てる際に3本重ねの方に充分固定しておけば、高い強度を確保できる。
この他にも隅の処理の仕方は何通りかあるようだ。
 
しかし、筆者は設計段階でそこまで考えておらず、2×4の隅の柱だから4×4でよいだろうと短絡的に考え、89mm×89mmの柱で作るよう図面を作った。しかしこれでは断熱材や内壁を固定する部分が取れないことは、賢明な読者諸君になら自明のことであろう。
多少の無理をしてでも書き換えればよいものだが、プラットフォームも寸法通り作ってしまったし、すでに賽は投げられているため、現行の設計で行くことにした。
 
4×4材はあまり流通していないようで、案の定最寄りのコメリにも置いてなかった。そこでよく使われる方法が、2×4と2×4の間に12mmの合板を挟むやり方だ。
2×4はおよそ38mm×89mmなので、合板を挟むと38+12+38=88mmとなり、ほぼ4×4の寸法になる。ちょっと面倒だが、これを採用しよう。
 
窓はピッチ1個か2個分に作れば楽だ。枠の両脇の柱には、窓の重みに耐えるための補強の材を、窓枠の下に追加する。その分断熱材が圧縮され、入れにくくなると嫌なので、ここは薄めの1×4とした。長軸方向の圧縮力のみ働くので、1×4で充分ではないかと考えた。
 
ひとりでなんとか3面分の枠組みを組み立てて、友人の助けを得て山に上げ、プラットフォームに固定した。
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壁の枠が立って、一段と家感が出てきた。ワクワクしてきたね。
 
壁の枠組みの上下の梁は、出来るだけ1本の2×4材で作成するべきとのこと。今回のハウスは1辺2948mmなので、12Fで足りる。さらに、4隅の重なり方が互い違いになるように、もう1段、梁を重ねると強度が増すようだ。
理想的にはそうなのだが、作業日の手持ちの12F材が足らず、梁は1段だけで、しかも6Fを繋いで組み立てた。強度的にはお粗末だが、軽量化を優先したことにしよう。梁を繋いで作らなければならないときは、せめて上下の梁が同じ柱のところで繋がるのではなく、接続部をずらして組み立てるべきである。最低限それはやった。
 
この段階では、枠だけなのでまだグラグラ。残る1面の壁を組み付けて、構造用合板を貼ると、しっかりと強固な壁となる。
明日には到達したいと願いつつ、2日目の作業を終えた。
 
次回、また土台で問題が発生する。ニヤニヤしながらお待ちください。

作業記録 6.22-25 その1

前回作業は、土台に根太と床合板を貼り、デッキ上で乾杯するところまでであった。

その際、樹木に固定しているM20ボルトがかなり傾き、危うい状況になっていた。その場は鉄の突っ張り棒でボルトの横を持ち上げて補助し、崩落はしないように支えて終了した。

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なんとか持ってくれた

20日ほどの日数が空いたが、土台自体は特に変化した様子もなく、ボルトも抜けかけではあるものの保ってくれていた。

 

100mmのボルトでは樹木の芯に刺さっている長さが短すぎてすぐに傾いてしまうため、ボルト交換からの作業である。

事前に色々検討した結果、ボルトを2サイズアップしてM24とし、さらに抜けてくることが無いように、長いボルトで樹木を貫通するように設置することにした。長いボルトはなかなか売っておらず、寸切で代用とした。樹木の直径が420mm前後だったので、1500mmのステンレス寸切を注文し、2つに切断することとした。

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金属 vs 人

あいにくグラインダーを持っておらず、手持ちの一般金属用の金鋸で勝負を仕掛けた。両側を重量物で固定し、正座しながら両手でゴリゴリやっていくと、ちょっとずつ削れるようだ。なんとかいけそうだったので、90分ほどの時間をかけて切断した。少なからず後悔したため、次からは寸法で注文しようと思う。

 

現地に向かい、ボルトの左右をジャッキアップしてボルトを抜く。抜いた瞬間崩壊する恐怖もあったが、何箇所も柱を立てておいたので微動だにしなかった。

そして、新たに入手した径21mm 全長600mmのドリルで木の幹を貫通させる。その穴にダブルナットで寸切をねじ込んでいくのだが、これがとても重い。特大のパイプレンチでグイグイやるのだが、全然進んでいる気がしない。随分頑張ってもまだ10cmくらいだ。

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キツすぎて後悔(2回め)

しかしこれはアメリカのツリーハウスメーカーでも苦労していた。幸い友人が手伝ってくれていたので、レンチ手元の先端にロープをくくりつけ、下から引いてもらいながら二人がかりでねじ込んでいく。2時間くらい奮闘を続けて、ついに2本とも貫通させられた。

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一人では心が折れる。二人ならなんとか可能。

こうして晴れてボルト問題は解決。今後さらに貫通した反対側にも土台を追加し、木を囲むようにして補強を行う予定。

 

やってみて分かったが、貫通するまでねじ込むのは相当の労力を要する。また、ドリルで穴を開ける際、慎重に水平を確認しながら行っても、どうしても数cmの誤差が生じうると思う。

それを考えると、樹木の芯の部分に20cm程度ねじ込めば十分と思われる。木の両側にボルトを付けたい場合でも、貫通させるよりもそれぞれねじ込んだほうが、高さも合いやすいし労力も少ないだろう。長さ285mmのボルト規格がちょうどいいかもしれない。

 

ボルト部分の問題はこれにて一旦解決したが、また別の問題が浮上してきた。今日は眠いのでまた次回へ。

小屋DIYの勉強 「小屋大全」

近所の図書館でツーバイフォーの理解のため、本を借りてきた。

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小屋大全/西野弘章 山と溪谷社

これは著者や知人がセルフビルドしてきた小屋の建設事例が8棟ほど紹介されており、詳細な手順や全体の図面も載っている。工程ごとにこまめに写真が撮ってあり、かなり丁寧に感じる。工法もツーバイフォーのみでなく、セルフで軸組工法にも挑戦しており、ログハウスの章もあって、ボリュームはかなりのものだ。

いろいろな方法はあるだろうが、ひとまずこの本とやる気があれば小屋は建つような気がする。

 

中には素人で山を開拓して、切り出したスギでログハウスをセルフビルドしている猛者の紹介もあり、なんでもできそうな気がしてくる。

著者の文体がやや昭和っぽく前のめりなのは、DIYへの情熱が余りある為か。多少は仕方ないと考え目をつぶろう。

 

基礎の打ち方も何種類か解説してあり、中でも丸太を穴に埋める掘っ立て小屋形式が、意外と耐久性に優れていることが印象的だった。丸太を炙って表面を炭化させた状態で60cmほど地面に埋め込み、それを柱としていたが、15年経過しても全く腐っていないようだ。柱の腐れ対策に、屋根の軒をかなり大きく張り出させ、地面が濡れにくくしているのが効果的らしい。降雪が無く湿度の低い地形なら可能なのだろう。

 

また、住居や別荘として使う場合に必要な、トイレや浄化槽、電気、水道などのノウハウにもページが割かれているため、調べにくいことだけにかなり助かる。いつかツリーハウス上に露天風呂を作る際の参考にしよう。

 

ピッチの考え方や細かい屋根の貼り方なども書いてあり、とにかく著者の経験してきたDIY技術のほとんど全てが盛り込まれているような、分量の多い本であった。

ツリーハウスについては、予想通り全く触れられていないが、壁の作り方や棟、屋根の構造などはとても参考になった(設計を変更するほどの間違いは無かった)。

 

ただ、小屋レベルのセルフビルドを行う際には簡単な図面を書く段階から、図書館でこの規模の本を読んで、一度文献的な検討を行ったほうが、全体の流れがスムーズになるように思う。

図書館の建築のコーナーにも、小屋の作り方やDIY向けの本がかなり多かった。ツリーハウス関連書籍も5冊ほど見つけられた。ネットの情報も良いが、書籍の情報も価値があることを再確認することができた。

 

 

小屋大全 夢の手作り小屋を実現しよう! ~小屋作りの実例と超実践的ノウハウ集~

小屋大全 夢の手作り小屋を実現しよう! ~小屋作りの実例と超実践的ノウハウ集~

 

 

 

作業記録 5.31-6.3 その2

前回に引き続き、直近の作業経過について記録していく。

※前回の記事:作業記録 5.31-6.3 その1 - ツリーハウス施工記録

 

土台の上に根太をどんどん張っていき、家屋部分は大体張り終えた。写真向かって左側の木の向こうにも、側面のデッキを作るために1本張りたいところだが、土台から飛び出した部分である。土台を追加して、強度を確保したいところだが、山を登ってきて最初に目につく部分でもあるし、意匠として2x4材で三角形の構造を作って支える設計をしてみた。

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この4つの材で側面デッキを支えたい

バシッと決まれば、下からの見た目の良いアクセントになるし、たまに歩き回るくらいの場所なので多少冒険してみようと思う。

三角形で支える場合、この場合は特に左の先端接合部に強いずり応力がかかると思われる。そのため、剛性の高い接合方法をとった方が好ましい。金属板でガチガチにするのも良いが、できるだけナチュラルな見た目を目指し、今回は木にホゾを作って簡単な木組みを作ってみることとした。

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理想図

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現実

ちなみにこれは最もうまくいった一組である。一日雨の日があったので倉庫内でこれを作っていたが、まあノミを使うのもはじめてだし、うまくいかないものだ。しかし、多少緩みがあってもネジでしっかり留めればそれなりに剛性が得られると信じたい。

上記の4点をさらに土台に組み付け、デッキ部分の根太を残すのみとなった。

この時点で最終日昼であった。最終日までには床の合板を張り、その上で友人とビールで乾杯するという目標があったため、家屋部分の合板を優先して作業することとした。

合板はホームセンターで最も一般的に入手可能な構造用合板である、針葉樹合板12mmを使用した。合板はほとんどが910x1820mmという寸法を持つが、これは在来工法で使われることの多い455mm(1.5尺に相当)ピッチに合わせて作ってある。これを縦に張っていけば2ピッチでちょうど1枚分であり、非常に効率が良い。しかし今回は、金に目がくらんで飛びついた断熱材に合わせて、468mmピッチという変則的な寸法のため、合板を加工する必要がある。加工と言っても接合部が根太上になるよう寸法を決め、丸のこで長方形に切っていくだけなのでそれほど手間ではない。端材は出るが、屋根下の半端な寸法の部分に使えるだろう(たぶん)。

こうして自分の判断を正当化していくのがDIYにおいて非常に重要な要素となる。

 

自作丸のこガイドも使いつつ、合板をカット、計8枚を使用して床合板を張った。

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殿、既に宴の用意は整っております。

このために、友人はヱビスビール500mlを用意してくれていた。上に合板が乗れば、ようやくツリーハウスのフェーズ1終了といったところである。このセーブポイント到達を祝して、森林の中突如出現したデッキ上で、意外にも2時間を費やして、楽しい語らいを重ねた。

ビールと一緒にファミリーマートでタンスティックを買ってきてくれたのだが、これがまた中々の美味であった。普段はローソンのドライソーを好んでいたが、要冷蔵ではあるもののタンスティックも独特の歯ごたえとレモン風味を備え、150円の価格に見合う価値を主張していた。嬉しい発見であった。

 

順風満帆のように見えるが、もちろんトラブルも発生した。

サイドストーリーに出来ないくらい重大な案件なのだが、重量のほとんどを支える左右のボルトが、かなり歪んできているのを発見した。

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ボルトの頭がかなりうつむいてきている

使用しているのはM20(直径20mm)、長さ100mmのステンレスボルトである。

飛び出した部分に2x10が乗るだけの余裕を持たせなければならないため、木の幹にはせいぜい45mm程度しか入っていないことになる。樹木の外側は樹皮の厚みもあるし、内部の硬い組織に刺さっているのはもっと短い距離かもしれない。写真から、ボルトの軸が曲がっているようには見えないし、ステンレスとはいえ20mmの鉄がこれくらいの重量で曲がるとも思えないので、おそらくボルトが短すぎるせいで、重量を支えられるほどの長さにボルトが入っておらず、木質組織が潰れてしまったのだろう。

組織が潰れて傾いているが、ネジ山はまだ食い込んでいるため抜けてこず、落下を免れているように思われる。これではおちおち上で酒を飲むわけにもいかないので、取り急ぎボルトの横に支えの鉄柱を立て、少しリフトアップさせておいた。

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倉庫で使われていたネジ付きつっかい棒。動かざること山のごとし。

これでしばらくは安全だと思う。

問題点は、ボルトの強度というより長さだろう。ホームセンターで手に入る範囲のものでなんとかしようとしたのが誤りであった。本場のGL工法では、30mm程度のボルト(Garnier Limb ボルト)を200mmくらいねじ込んでいるようである。

treehouses.com

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今回作業中に、建築士をやっている友人(通称"現場監督")が視察に来てくれた。その際指摘されたのが、やはりボルト固定部の強度不安であった。その解決のため、2つの対策を提案してくれた。

1.ボルトで樹木を貫通させ、両側からガッチリ土台で囲む構造とすること。

2.2箇所のボルト固定部をつなぐような、1本の斜めの材を土台に追加すること。

ボルト自体の問題が浮上した現状、根本的対策として1の方法を講じたほうが良いだろう。ボルトの長さを単純に延長する方法もあるが、製造方法的に長いボルトは作りにくいらしく、数千円にもなってしまう。

そこで、どこかのツリーハウスブログの人がやっていた、寸切を用いる方法を採用した。

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ボルトの頭が無ければ、長いネジでも比較的簡単に作れるようで、ボルトよりも数倍安い価格で入手できそうである。

貫通させるには今あるドリルビットも長さが足りない事だし、この際ボルトの径もワンランクアップさせ、M24の寸切1.5mを注文した。4000円ほどであった。寸切には頭が無いが、ナットを2つつけるダブルナットというテクニックで締め込むことは可能なようなので、大きな問題にはならなそうである(予想)。樹木の径は420mmだが、treehouse #2以降も想定し、どどんと600mmのドリルビットをAmazonで注文した。

 

ボルトの下穴は、(ボルトの径)ー(ボルトのピッチ)とするのが通常らしい。ボルトの規格は下表を参照。M24ならば(径24mm)ー(ピッチ3mm)で、21mmが適当と思われる。

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ネジの世界も奥が深い。半沢直樹の父親を思い出した。ネジを持って銀行員に泣きつく回想シーンは、1クールで一体何回流れたのだろう。2期が待ち遠しい。

 

半沢ネジに思いを馳せつつ、M24寸切の到着を待つ。手持ちの金属のこぎりで切断可能だろうか。

 

 

次回、「金鋸死す」。デュエルスタンバイ!